「慢性的な腰の痛みがなかなか取れない」
「朝起きたときに背中やお尻のあたりがこわばる」
「腰が痛いから横になって安静にしたのに余計腰が痛くなる」

そんな症状が続いている方は、脊椎関節炎(せきついかんせつえん)という病気の可能性があります。

この疾患は、自己免疫の異常により背骨や骨盤まわりの関節に炎症が起こる、膠原病・自己免疫疾患の一つです。関節リウマチとは異なる特徴を持っており、診断や治療には専門的な知識が必要となります。

当院では、脊椎関節炎を含むさまざまな膠原病の診療に取り組んでおり、患者さま一人ひとりに合った診断・治療を提供しております。

脊椎関節炎とは?

脊椎関節炎(英語名:Spondyloarthritis/SpA)は、背骨(脊椎)や骨盤の関節(仙腸関節)に炎症が起こる慢性的な病気です。

自己免疫性疾患(膠原病)の一種で、自分の免疫が自分に炎症を起こすことによって発症する病気です。特に若い男性に多く見られますが、女性にも起こることがあります。

脊椎関節炎という名前は、ひとつの病気を指すのではなく、以下のようないくつかの似た特徴を持つ病気のグループをまとめた呼び方です。

  • 強直性脊椎炎(AS)
  • 乾癬性関節炎(PsA)
  • 炎症性腸疾患に関連する関節炎
  • 反応性関節炎
  • ぶどう膜炎を伴う関節炎  等

これらの病気はいずれも、免疫の働きに異常が起きて、自分の体の関節や靭帯に炎症が起こるという共通の特徴を持っています。

脊椎関節炎の主な症状

脊椎関節炎で見られる症状は以下です。(全ての症状が出るわけではありません。)

  • 朝のこわばりを伴う慢性の腰痛・背部痛
  • お尻(仙腸関節)まわりの鈍い痛み
  • 動かすと痛みが軽減する特徴的な腰背部痛
  • 足首・アキレス腱・足底腱膜などの炎症
  • ぶどう膜炎(目の炎症)
  • 下痢や腹痛などの消化器症状(炎症性腸疾患を伴う場合)

特に「朝方に強く、動かすと楽になる腰痛」は、炎症性腰痛と呼ばれ、脊椎関節炎の特徴の一つです。

脊椎関節炎の原因

脊椎関節炎は、現在のところ完全に解明された疾患ではありませんが、以下のような要因が発症に関与するとされています。

  • HLA-B27遺伝子との関連性(日本人では欧米より関連が弱いとされます)
  • 腸内環境の乱れと免疫異常
  • 感染症や環境因子などによる免疫の過剰反応

膠原病や自己免疫疾患に共通する「自分の体を異物と誤認識して攻撃してしまう」免疫異常が、この疾患の本質です。

脊椎関節炎の診断について

脊椎関節炎は以下の流れで診断を行います。

  • 詳細な問診と身体所見
  • 血液検査(炎症マーカー、HLA-B27の有無、自己抗体など)
  • 画像検査(X線やMRIによる仙腸関節の炎症評価)

特に、初期段階ではX線では異常が見られないこともあるため、MRIによる早期診断が重要となります。

脊椎関節炎の治療方法について

薬物療法

・NSAIDs(消炎鎮痛薬):まずは痛みと炎症のコントロール
・生物学的製剤(抗TNF-α抗体など):炎症を根本から抑える治療。注射または点滴で投与
・免疫抑制剤・DMARDs(抗リウマチ薬):付随する症状が強い場合に使用することがあります

運動療法・リハビリテーション

・関節の可動域を保つストレッチ
・呼吸機能の維持、姿勢保持訓練

生活指導

・禁煙、腸内環境の見直し、ストレス管理なども重要。

過労にも注意しなければなりません。

脊椎関節炎と関節リウマチとの違いは?

項目 脊椎関節炎 関節リウマチ
主な部位 背骨・骨盤・下肢関節 指・手首などの小関節
年齢・性別 若年〜中年の男性に多い 中年以降の女性に多い
遺伝的背景 HLA-B27との関連 HLA-DR4など
全身症状 ぶどう膜炎・腸症状・皮膚症状 倦怠感・微熱など
治療薬の種類 生物学的製剤が有効な例も多い 抗リウマチ薬、生物学的製剤、等

気になる症状がある方は、早めのご相談を

脊椎関節炎は、見つかりづらく診断も難しい病気の一つです。特に、一般的な腰痛や筋肉のこわばりと見分けがつきにくく、発見が遅れることも少なくありません。

しかし、早期に適切な診断と治療を受けることで、症状の進行を防ぎ、日常生活の質を保つことが可能です。

「慢性的な腰の痛みが続いている」「朝に体がこわばる」「痛みがなかなか引かない」といった症状に心当たりのある方は、自己判断で様子を見るのではなく、専門医の診察を受けてみることをおすすめします。

もしもご心配の点がございましたら、当院までお気軽にご相談ください。

患者さま一人ひとりに寄り添いながら、丁寧な診療と的確な治療を提供いたします。

この記事の監修者:藤本潤

天王寺ふじもと膠原病リウマチクリニック院長

<資格>
医学博士/日本リウマチ学会 リウマチ専門医・指導医/日本リウマチ学会 登録ソノグラファー/日本内科学会 総合内科専門医・指導医/日本アレルギー学会 アレルギー専門医/難病指定医

医師プロフィール詳細はこちら