「骨粗しょう症は高齢者だけの病気」と思っていませんか?
実は、関節リウマチや膠原病を患っている方は、骨粗しょう症を合併しやすいことが医学的に知られています。
その背景には、炎症性疾患そのものや治療に使われるステロイド薬の影響、さらに運動量の低下など、さまざまな要因が関わっています。
骨粗しょう症を放置していると、背骨や大腿骨の骨折が起こりやすくなり、寝たきりや要介護のリスクが一気に高まります。
とくにリウマチや膠原病で通院中の方は、骨粗しょう症のリスクを「自分ごと」として早めに対策することが重要です。
この記事では、大阪・天王寺で膠原病・リウマチ診療を専門に行う当院長が、
- なぜリウマチや膠原病と骨粗しょう症は関係が深いのか
- どのように予防・治療すればよいのか
といったポイントを、患者さまご自身が「今すぐできること」に落とし込んで、専門医の視点からわかりやすく解説します。
そもそも骨粗しょう症とは? 実は誰にでも起こりうる「骨の病気」
骨粗しょう症は、「高齢女性がなる病気」と思われがちですが、特に関節リウマチや膠原病の患者さまにおいては、高齢女性以外でも、そのリスクが高まることが知られています。
私たちの骨は、石のように硬くて変わらないものと思われがちですが、実際には日々「壊して作る」を繰り返す新陳代謝(リモデリング)が行われています。
※参考:骨リモデリングの制御機構
このリモデリングのバランスが崩れ、「骨を壊す働き」が「骨を作る働き」を上回る状態が続くと、骨がスカスカになっていき、骨粗しょう症になります。
特に女性は、閉経後に女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減少することで、骨密度の低下が進行しやすくなります。日本国内では約1,280万人が骨粗しょう症に罹患していると推定されており、その7割以上を女性が占めています。
骨粗しょう症が進行すると、骨折を起こしやすくなります。
特に注意が必要なのが以下のような骨折です。
背骨の骨折(脊椎圧迫骨折)
転倒しなくても起こり、「いつの間にか骨折」と呼ばれることもあります。
大腿骨頸部骨折
尻もちなどの軽い衝撃で起こり、手術や長期のリハビリが必要になることもあります。
こうした骨折が起きると、「腰が曲がる」「歩けない」などの生活機能の低下を招くだけでなく、寝たきりや要介護状態に直結することも少なくありません。
そのため、骨粗しょう症は放置せず予防・早期治療が非常に重要なのです。
なぜ関節リウマチや膠原病の方は骨粗しょう症になりやすいのか
関節リウマチや膠原病の患者さまは、そうでない方に比べて骨粗しょう症を合併するリスクが高いことが数多くの研究で報告されています。
その理由は主に以下の3つに集約されます。
❶ 炎症そのものが骨を弱くする
関節リウマチや全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病は、体内で慢性的な炎症が続く疾患です。
この炎症により、骨を壊す作用のある「破骨細胞」が活性化し、逆に骨を作る「骨芽細胞」の働きが低下します。
つまり、炎症が骨代謝を狂わせ、骨密度が下がりやすくなるのです。
❷ ステロイド治療が骨に影響する
膠原病や関節リウマチの治療で広く用いられる「ステロイド薬(副腎皮質ステロイド)」は、炎症を抑える効果が高い一方で、骨密度を減少させる副作用があります。
ステロイドの長期投与においては骨量減少は避けられない副作用の一つであり、投薬治療などの対応が求められます。
❸ 運動量の低下と筋力低下
関節の痛みや腫れによって、動きにくくなったり、外出が減ることも骨の健康に影響を及ぼします。
骨は「適度な負荷(刺激)」によって強くなっていきますが、運動量が減るとその刺激が不足し、骨が脆くなっていきます。
また、筋力の低下も転倒リスクを高め、骨折の引き金になります。
リウマチや膠原病の方には「痛みと上手につきあいながら体を動かす」ことが骨粗しょう症の予防にもつながります。
このように、関節リウマチや膠原病の治療経過においては、疾患そのものの影響・治療薬の副作用・生活の変化など複数の要因が重なって、骨粗しょう症になりやすい状況が生まれているのです。
次は、患者さまご自身でできる骨粗しょう症予防のポイントについて解説します。
骨粗しょう症を防ぐには?──生活習慣・食事・運動の見直しがカギ
骨粗しょう症は、治療だけでなく日々の生活習慣の見直しによって予防することが可能です。とくに関節リウマチや膠原病をお持ちの患者さまは、骨を守る生活を早期から意識することが大切です。
❶ 骨の健康を守る栄養素をしっかり摂る
骨を強くするためには、以下の栄養素が特に重要です。
- カルシウム:骨の主成分。牛乳、チーズ、小魚、小松菜などに多く含まれます。
- ビタミンD:カルシウムの吸収を助け、骨への沈着を促進。魚類(サケ・イワシ)やキノコ類に多く含まれます。
- ビタミンK:骨の形成に必要なオステオカルシンを活性化。納豆や緑黄色野菜に多く含まれます。
食事で摂りきれない場合は、医師の指導のもとサプリメントでの補給も選択肢になります。
❷ 適度な運動で骨と筋力を強化
骨は「刺激」を受けることで強くなります。つまり体を動かすことが骨粗しょう症の予防に直結します。
以下のような運動が効果的です。
- スクワットや昇降運動:足腰の筋力と骨に適度な負荷をかける。
(階段を登る 山を登るなど。) - 飛び跳ねる動作があるような運動:着地の衝撃が骨を強くします。
(ジョギング 縄跳び エアロビクス 卓球 など) - 屋外での散歩:ビタミンDの生成を促す日光浴にもなる。
※リウマチや膠原病の患者さまは、痛みが強いときには無理をせず、医師の指導を受けながら安全な運動を継続することが大切です。
特に高齢の方や骨粗鬆症が既にある患者様は転倒による骨折のリスクが上昇しているため、上記運動で逆に転倒して骨折してしまっては本末転倒です。
安全性を確保し無理のない運動を行っていただく必要があります。まずは医師にご確認ください。
❸ 生活習慣病や嗜好品にも要注意
以下のような習慣は骨に悪影響を与えるため、骨粗しょう症予防のためには注意が必要です。
- 過度の飲酒:カルシウムの吸収を阻害し、骨代謝を乱します
- 喫煙:骨密度の低下を加速させると報告されています
- 糖尿病や甲状腺疾患:骨への負担や代謝異常を起こしやすいため、骨粗しょう症のリスク因子とされます
生活習慣の見直しによって、骨を守るための基礎が作られます。
次は、リウマチや膠原病の治療と両立しながら骨粗しょう症の治療をどう進めるかについて解説します。
骨粗しょう症の治療法と、関節リウマチや膠原病の治療の両立
ご自身の努力だけで骨量を維持できていれば問題はありませんが、なかなかそう簡単にはいかないのが現状のように感じます。
その場合、骨粗しょう症は、生活習慣の見直しだけではなく、必要に応じて薬による治療も行うことで骨折リスクを大幅に下げることができます。
関節リウマチや膠原病で治療中の患者さまにおいては、原疾患の治療と骨粗しょう症治療の両立が重要になります。
❶ 骨粗しょう症の主な治療薬
現在、骨粗しょう症の治療にはさまざまな薬剤が使用されています。それぞれに作用機序や特徴があり、患者さまの状態に合わせて選択されます。
活性型ビタミンD製剤(例:エルデカルシトール)
→ カルシウムの吸収を促進し、骨への沈着を助ける
ビスホスホネート製剤
→ 骨を壊す「破骨細胞」の働きを抑える。週1回・月1回などの服用/注射製剤もあり
抗RANKL抗体(デノスマブなど)
→ 骨を壊す細胞の働きをピンポイントで抑える。半年に1回の皮下注射など
副甲状腺ホルモン製剤(テリパラチドなど)
→ 骨を作る「骨芽細胞」を活性化させる。重症例に用いられる
抗スクレロスチン抗体(ロモスズマブ)
→骨形成促進と骨吸収抑制の二つの作用をもちます。
❷ ステロイド使用中の方は特に注意が必要
リウマチや膠原病の治療でステロイド薬を使用している場合は、早期から骨密度を定期的に評価し、骨粗しょう症治療を並行して行うことが推奨されています。
実際に、日本骨粗鬆症学会では以下のような指針が示されています。
ステロイド(プレドニゾロン)を5mg/日以上、3ヶ月以上服用している場合
→ 原則として骨粗しょう症治療の開始を検討
定期的な骨密度検査(DXA)で経過をモニタリング
❸ 当院での治療:疾患と骨のトータルマネジメント
天王寺ふじもと膠原病リウマチクリニックでは、リウマチ・膠原病の治療と並行して、骨粗しょう症の予防・治療も専門的に対応しています。
- ステロイド使用の有無をふまえた治療設計
- 骨密度検査(DXA法)の実施
- 食事・運動指導や薬物療法の組み合わせ
- 必要に応じた整形外科専門医との連携
「骨の健康を守ることは、全身の健康を守ること」につながります。
疾患と治療薬の特性を理解した上で、患者さま一人ひとりに合った骨粗しょう症対策をご提案いたします。
膠原病専門医の立場から──「寝たきり」リスクを防ぐために
骨粗しょう症は、骨が弱くなるだけの病気ではありません。
実際の現場では、骨粗しょう症による骨折をきっかけに、生活が大きく変わってしまう患者さまを何人も見てきました。
たとえば、足腰の痛みや骨折によって歩行が不安定になると、
「出かけるのが怖い」→「家に閉じこもる」→「筋力の低下」→「気力や食欲の低下」→「さらに動けなくなる」……
というように、身体機能・精神機能の両面において“負の連鎖”が生じやすくなります。
また、高齢の方にとって骨折は、そのまま「寝たきり」や「要介護状態」への第一歩となるケースが非常に多いのが現実です。
特に、大腿骨や脊椎の骨折は、手術や入院、リハビリを必要とし、その後の生活に大きな影響を与えることが珍しくありません。
骨の健康を守ることは、「自立した生活」を守ること
骨粗しょう症は予防・治療が可能な病気です。
しかも、適切な対策を取れば、骨折のリスクを大きく減らすことができます。
関節リウマチや膠原病の患者さまにおいては、もともと炎症や治療薬による骨密度低下のリスクを抱えています。
だからこそ、「骨を守る」という意識を早い段階から持つことがとても重要です。
リウマチや膠原病の治療に携わる専門医の立場から申し上げるなら、骨粗しょう症の予防や治療も、全身管理の一環としてきちんと向き合うべき課題だと考えています。
当院で、できる検査・治療・サポート
天王寺ふじもと膠原病リウマチクリニックでは、関節リウマチや膠原病の専門的診療だけでなく、骨粗しょう症の予防・診断・治療にも力を入れています。
骨の健康を守ることは、将来の生活の質を守ること。疾患の影響を受けやすい患者さまだからこそ、早期からの対応が大切です。
❶ 骨密度検査(DXA法)による診断
当院では、二重エネルギーX線吸収測定法(DXA法)による骨密度検査を実施しています。
この検査では、腰椎や大腿骨の骨密度を高精度で評価することができ、骨粗しょう症の有無や進行状況を客観的に把握できます。
検査は短時間で痛みもなく、外来で受けられます。
ステロイド使用中の方には、定期的な骨密度モニタリングをおすすめします。
❷ 専門医による薬物治療の提案
リウマチ・膠原病治療と骨粗しょう症治療の両立には、専門的な知識と経験が不可欠です。
当院では、膠原病専門医が疾患・治療歴・併用薬の状況を考慮しながら、安全で効果的な治療プランをご提案します。
ビスホスホネート製剤、デノスマブ、活性型ビタミンDなど多様な選択肢に対応しています。
必要に応じて整形外科など他科と連携して治療を進めます。
❸ 生活習慣・栄養・運動指導
お薬だけでなく、日々の生活を整えることも骨粗しょう症対策の要です。
当院では、患者さまの状態や生活背景に応じて、以下のようなアドバイスを行っています。
- 食事のポイント(カルシウム・ビタミンD・ビタミンKなど)
- 日常生活で取り入れられる安全な運動習慣
- 症状のある関節をかばいながら筋力を維持する工夫
❹ 健康保険の適用について
骨粗しょう症の検査や治療薬は、多くの場合で健康保険の対象になります。
とくにステロイドを一定期間使用されている方、または骨密度低下が確認された方には、保険診療内で適切な治療を受けられる体制を整えています。
ご不安な点があれば、お気軽にご相談ください。
まとめ:関節リウマチや膠原病の方は“骨粗しょう症”にも注意を
関節リウマチや膠原病の患者さまにとって、骨粗しょう症は決して他人ごとではありません。
慢性的な炎症、ステロイド治療、運動量の低下といった要素が重なり、骨が知らず知らずのうちにもろくなっていくリスクが高いのです。
そして、骨折をきっかけに生活の質が一気に低下してしまう――これは多くの現場で繰り返されてきた現実です。
だからこそ、早期からの予防・検査・治療が重要です。
天王寺ふじもと膠原病リウマチクリニックでは、リウマチ・膠原病の診療に加え、骨粗しょう症への対応も専門的に行っており、患者さまの全身の健康を総合的にサポートしています。
「骨折のリスクが気になる」
「ステロイドを長く使っている」
「骨密度を一度調べておきたい」
そんなときは、お一人で悩まずにお気軽にご相談ください。
骨を守ることは、未来の自分の暮らしを守ることにつながります。
この記事の監修者:藤本潤
天王寺ふじもと膠原病リウマチクリニック院長
<資格>
医学博士/日本リウマチ学会 リウマチ専門医・指導医/日本リウマチ学会 登録ソノグラファー/日本内科学会 総合内科専門医・指導医/日本アレルギー学会 アレルギー専門医/難病指定医

